東京メトロ日比谷線広尾駅を出て外苑西通りに沿って南方へ徒歩約10分、恵比寿三丁目の交差点のすぐそばを走る首都高速2号目黒線の高架下に新鮮な食材を七輪で自ら焼いて食べるというお店があります。本日は「寅」をご紹介させていただきます。
店の入口に掛かった大きな暖簾をくぐって店の敷地に入り、ガラス戸の引き戸の横には「寅」の一文字が掛かれた表札、実に赴きのある佇まいに、ここが首都高速の高架下であることを忘れてしまう人もきっと多いことでしょう。引き戸を開けて中に入ると目に入るのは大きなテーブル、このテーブルの真ん中は囲炉裏が切られており、そこには大小の七輪が並んでいます。この七輪を囲んで座り、新鮮な野菜や魚などを各々が焼いて食べるのが「寅」独特のスタイルです。野菜はしいたけ、長芋、長ネギなど、海鮮はししゃも、はまぐり、たこなど実に様々です。目の前で焼くのですから、本当の焼きたてをいただくことができます。これらの食材を焼くのも味気ないガスコンロとは異なり、七輪を使った炭火焼きです。開放的な野外や雰囲気の良い炉端でバーベキューや焼き物などを楽しまれる方は多いと思います。なぜ炭火を使って焼いた料理はあんなに美味しいのでしょうか。雰囲気が食材を美味しく感じさせているのでしょうか。そうではなく炭火焼きには本当に食材を美味しく焼き上げる力があるのです。
炭火は熱と共に強い遠赤外線を放射します。この赤外線が食材の旨味を高めてくれます。赤外線の輻射熱は食材の表面を高温で一気に焼き上げるために食材の持つ美味しさを内側に閉じ込めることができるのです。表面はパリッと焼き上がり、中身はジューシーでほかほかな旨味を堪能できるというのが炭火焼きの特徴です。そして、七輪の陶器は熱を帯びると陶器自体から遠赤外が発せられるため、炭火と七輪の組み合わせは焼き物に最高のコンディションが整うという訳です。この炭火焼きの旨さを味わってもらうというのが「寅」の強いこだわりといって良いかもしれません。
炭火を使って自分で焼くといっても気になるのは焼き加減です。焼き過ぎてしまったらどれだけ美味しい食材も味が落ちてしまいます。しかし、「寅」であれば店員が七輪の上の食材の焼き加減に目を配ってくれていますので安心です。少々酔いが回ってしまっても、焼き過ぎて食材を駄目にしてしまうことはありません。
寒い冬の日に炙った肴で一杯という気分のときや、海外からのお客さんに喜んでもらえる店に連れていきたいといったときなどにお勧めです。